ダウン症と聞くと、障害者の中では理解のできないでいた世界。
その家族の大変さは思いやるけれど、どこか遠い世界に感じていました。
そして、ダウン症を持って生まれた子どもたちは、どうしても差別対象になってしまうだろうと、それも遠い世界のようにして思っていました。
この本はそんな自分の認識に対して、とても衝撃的でした。
ダウン症をもって生まれた金澤翔子さんが、筆を持つと人を感動させるすばらしい書道家になったのです。
般若心経を始め、本の中に描かれている書は心打つものばかりです。
そして、この本はその大書道家が育ってきた道を切々と描いています。
少し知恵おくれの翔子さん。
なかなか社会に受け入れてもらえなかった翔子さん。
その翔子さんを受け入れてくれた保育園での生活が、翔子さんの道を築きました。
親にして思えば、守りたい存在が、自分で育っていく、自分で理解するのを待ちましょうと、園長先生は自立することを待ちました。
その中で、翔子さんは思いやりや、人とのコミュニケーション力を鍛えていったのです。
欲のないその姿は、筆でストレートに自分の思いを表現するまでになりました。
昨年の大震災の後、被災地を訪れては書展を開いたり、人々を励まそうと乗り出した翔子さん。
これでは逆ではないですか。
人々にたいして強い影響力をもつまでになった翔子さん。
素晴らしいノンフィクションです。