ふたりはだだっこ…というから兄妹か従兄弟の話かと思いきや。表紙には山スキーをはいたおじいちゃんと孫の姿。絵を降矢さんが描かれているとなれば、内容を見ずに手に取ったのは言うまでもありません。
おじいちゃんと僕のことをお母さんは「2人の大きなだだっこ」と呼びます。今日もお掃除を始めたお母さんを尻目にいそいそと手をつないで外へでる2人。庭のベンチに座るとおじいちゃんがこう言います。「ところでお前はヌキを知っとるかね」ヌキ??読み聞かせていたこどもたちが一斉に聞きます。するとそう想定されていたかのようにテキストに「ヌキというのはな、狸のことじゃ。タ・ヌキなら狸はヌキじゃろうが」とおじいちゃんが答えるのです。「こんな日は狸雲がでる」というとこどもたちが「狸雲って?」と聞く。するとまたテキストに狸雲の説明がされる…という具合。こうしたテキストと絵本の前のこどもたちの掛け合わせが成立してしまう今村さんのすごさを実感。
おばあちゃんが亡くなって、娘の所に引き取られたおじいちゃんのいきさつを説明する最後のページはこどもたちにはよけいかな?でもまあそうした事の好きなお母さんにはぐっと来るかも。それでないと、あまりのおじいちゃんのホラのスケールに驚いてこの本を手に取らないお母さんが出てくる?それはもったいない!それまで見越してるなら、おじいちゃんの言葉を借りればまさに「きれいな仕事」だろうて。