小学校2年生になったノンちゃんが体験した、不思議な体験と、現実の学校や家庭内のお話。
1967年刊行。筆者の実体験ではないだろうかと思われるほど、リアルな描写が印象的。子どものころに、私は「大人は、子どもの頃の気持ちをどんどん忘れていってしまうのだ」と思っていたが、この人は違った。兄弟間の葛藤、家族内の行き違いなどもしっかりと書かれていて、胸が詰まる。
嘘も方便とは言うが、子どもだからって適当に誤魔化していたり、本当のことを言わないでいたりされると、深く傷つく。
そのことを、小さい子どもが事故に遭って、三途の川を渡る(ここでは雲の上だが)体験をして帰ってくるという話で表現しているのだと思った。
身の上話をしながら、自分の間違いに気が付いたり、いろんな発見があったりするところなどは、読んでいて共感したり、感心したりした。話すという体験で、学ぶことも多いのを、筆者は知っている。
この作品の後も、生涯、子どもたちのために働いた筆者の、真摯な思いが伝わってくる。一本気な性格のノンちゃんは、私には石井桃子その人だと思えてならない。
大人が読んで、ちょうどいいような読み応えのある作品。
子どもが読んでももちろんよいのだろうけど、年齢に関係なく、人の気持ちについていろいろな発見があると思う。