『「かさや、かさや、かさは いらぬか」
こういって、かみちょうから しもちょうへ、
しもちょうから かみちょうへ、いくどもあるいた。
けれども、だれひとり かうものがない…。
じいさんの かさなんか、みむきもされなかったと…。』
子どもはうつむいて だまって 聞いていました。
悲しいけれど こころのまどを開いて 聞いていました。
『「あやぁ、むごいことだなあ。はだかで ゆき かぶって
さぞ さむかろう」と、じいさんは、うりもののかさを、
じゅんじゅんに…』
子どもは顔を上げて だまって ページをのぞきこみます。
うなずきながら かさを勘定して 聞いています。
実は話の筋をすでに知っているのに、毎回同じことの繰り返し。
この絵本のつくり、本の中に、また本があるように見える、
それが不思議でずっとずっと のぞきこんでは
いつ中の本が閉じられるのか、気が気でないのかなぁ。
だからいつも、彼女はこころのまどを開きっぱなしにして
中を窺っている、そう思えてなりませんでした。
すてきな絵本を 福音館さま、ありがとう。
感謝