ラルフという猫の悪態は、見る者/読む者に「よい子」という麻薬を提供してくれる:いたずらが目に余れば余るほど、である。ニコール画伯のイラストが実に憎たらしい。毒々しい形と色、子どもでもすぐわかる「よくないラルフ」である。
しかし飼い主のセイラ嬢家族も、ラルフをサーカス小屋に置き去りにする。「あーあ、いけないんだ」と、よい子病の人間は自らの言動に矛盾を感じながらも寄らば大樹に陥るのだ。「ラルフはどこで、どんなことをしていたの?」なんてセイラが尋ねるのだから、都合のいいことったらありゃしない。
ウラオモテ激しい現実社会の醜さはラルフのいたずら以上だろう、よい子病に侵されそうな私は考える。
25刷も愛され続けている。素晴らしい童話館に、感謝。