1978年刊行。身近なところからどんどん「もっと高く」「もっと遠く」へ飛躍していき、自然物、人工物・技術、地球、天体と大きな世界に向かって果て無く突き進む。科学絵本。
この絵本は、「かこさとしの世界」という筆者の仕事を総まとめにした一冊の本で知った。子どもたちが身近なところから理解できるように工夫したという。筆者は、後書きにあるように、この本に実に壮大な願いを込め、制作に専念するために25年間勤務した会社を退職し、資料の整理のためにアトリエを増築したという。
この本に込めた想いの強さが察せられる。
几帳面に、丁寧に、真正面から正攻法で読者に語り掛けている。
だが、あまりに真面目になりすぎると面白くないからか、ところどころにユーモアが入る。大きな画面にたくさんの絵や情報が書き込まれているが、大事なところにはしっかり目が行くようになっている。
そんなに大事ではない(と思われる)ところにユーモアがあり、それを発見する喜びもある。
70年代に発行されているので、新しい発見や情報の更新などが現代と違うところもあるのだろうが、今読んでも十分に面白く、発見がある。
何よりも、こんなにたくさんの情報を入れ込んでいるのに、すっきり見える上、制作者の意図がしっかり伝わるレイアウト、デザインが素晴らしい。
それぞれの位置や、大きさ、速さなどの違いが、イラストで一発で理解できる。順番に並べてみると、技術の飛躍がよくわかる。
この本は、最初に読むとどんどん途方もない世界に飛んでいってしまい、不安になった。だから、2回目は最後のページから逆戻りしてみた。そうすると、自分のいる場所の机の前からどんどん人類の歴史をたどり、未来に向かって飛び出し、宇宙の果てに行ってから、家に帰ってくるという旅行ができる。
最後に「普通の大きさのマッチ箱」とか、コメツキムシ、新宿住友ビルなんかを見ると、ほっとする。
壮大な宇宙も素晴らしいが、今いる自分の家、地球も素晴らしい。
そして、読者にいろんなことを真摯な態度で伝えようとする作者の真心も素晴らしいとわかる。神様や宇宙人などの視点が体験できるかもしれない。