勘違いで、職場体験先に保育園を選んだ楓汰の悲喜こもごもである。
出だしは、『ケイゾウさんは、四月がきらいです』と『君が夏を走らせる』がミックスしたような感じで笑いを誘う場面があった。
しかしである。現在の保育園及び子どもたちの社会は、そのような笑いで満ち溢れている社会ではない。そのことを、痛切に感じたうえで、いとうみくは次々と作品を世に送り出してくれているのだと思う。
『糸子の体重計』からその萌芽はあり、読者の心に波紋を起こさせる。
最後は、涙でいっぱいになっていた。しおん君のような子どもは今実際にごく身近で暮らしている。そして、風汰のような中学生もいる。
その二人が、偶然であっても関わりを持つことができたのであれば、職場体験も悪くはない。
そして、子どもの成長は評価や数値で測ることができるものではないということも、大人である私に再認識させてくれた。
どうか、どうか子どもたちが子どもたちが安全に幸せに育つことができる世の中であるますように!、そのことを切に願う。