日本を代表する児童文学といっていいこの作品を初めて読んだのはいつだろうか。
調べると、この作品を書いた浜田廣介は坪田譲二や小川未明とともに「児童文学界の三種の神器」と呼ばれていたそうだが、さすがに「三種の神器」という言い方は現在では古すぎる。それでも、浜田のこの作品はちっとも古びていないように思う。
浜田廣介は明治26年(1893年)山形県高畠町に生まれた。現在ここには浜田の功績を讃えた記念館がある。
亡くなったのは昭和48年(1973年)80歳のことである。
この作品が「おにのそうだん」として初出されたのが1933年というから浜田が40歳の時。
作家としてはまだ初期の頃だろうか。
この作品には二人の鬼が登場する。
村人たちと友だちになりたい「赤おに」となんとかそれを助けたい「青おに」。
この作品が読むものをの心を打つのは、なんといっても「青おに」の自己犠牲の優しい心だろう。
自分が人間に乱暴を働く、それを「赤おに」がとっちめることで村人たちの信頼を得る。
そして、自分はそのまま身を隠す。
だから、最後の「青おに」が立てた立て札に書かれた文に感動する。泣くのは「赤おに」だけでなく、読者もだ。
そして、それは子供だけでなく大人だって同じだ。
この絵本は浜田の文章に絵本作家のいもとようこさんの柔らかな絵がついている。
そこではみんなほっこりした表情をしていて、それもまたこの作品にあっている。