ウンゲラーの第一作として見た絵本。
その後の絵本の破天荒さと比して、極めてシンプルな絵調です。
しかし、文章の面白さの中に、とても素晴らしいものを見つけました。
絵や話のディテールの中に、大人としてのこだわりが強く入っているのです。
子どもたちに冒険話をする際に、「石油を採掘するためにはこんなことが必要で、石油はこんな場所にあるんだよ」とか、「宝物を見つけたのはいいけど、船をこわしたら弁償しなければいけないんだよ」とか、「地底の洞穴にはこんなことがあるんだよ」とか、子どもたちにはどうでも良いこと(ゴメンナサイ)に、とても几帳面にこだわっている。
それに、お父さんは何でも屋のように、いろいろと技を出してくる。
これを見るとお父さんて何でも出来ちゃうんだねと、子どもたちにとって偉大な人間に思えてくる。
これって、子どもの夏休みの宿題で出番を見つけたお父さんが、いつの間にか自分の方が夢中になっているような感覚。
でも、子どもが大きくなって、「お父さんが言っていたこと分かった」と思って父親の評価がワンポイント上がる要素だと思う。
チャランポランかそうでないか、とても大事なポイントだと思います。
この本は、子どもに読み聞かせを無理強いするような本ではないかもしれませんが、この本は親にとって教わるところが大だと思いました。
そして、おの処女作があったからウンゲラーの大世界が構築されたのだと思えば、ウンゲラーの破天荒を予感させる作品でもあります。