「針つくりの花むこさん」 自信を持っておすすめしたい みんなの声

階級差別の強いインドの話だからでしょうか、瀬戸内寂聴さんの文章だからでしょうか、心に突き刺さる針のようなお話です。
貧しくても、チャンダには針造り職人としての意地があります。
町１番の大富豪には、富裕者としてのプライド意識があります。
この両家の娘と息子が恋をしたらどういう事になるのでしょう。
貧富の差を乗り越えた愛の成就には、大富豪の息子タッカリーの決意とひたむきな努力がありました。
話としては少し理屈っぽいのかもしれません。
でも、これだけの思いの末の成就ならば、揺らぐ事はないのだろうと思いました。
若者はどのように受け取るのでしょうか。

ジャータカという釈迦の前世物語の中のおはなし。
インドの針つくりの名人チャンダの娘サラに恋したタッカリー。
身分の違いゆえ結婚を許されなかったタッカリーは
チャンダの条件、針つくりの名人になるべく家出するのです。
大金持ちという身分を捨てて、ひたすら針つくりの修行に打ち込む
タッカリーの姿が清々しいです。
インドの身分制度も垣間見えます。
人間の平等を唱えた仏教の精神が反映されたおはなしだけに、
瀬戸内寂聴さんの再話への想いが感じられました。
絵もインドの雰囲気がよく出ていて、新郎新婦がそれはそれは美しいです。