ミステリアスなお話で謎解きのような感覚で読めるのですが、背景には広島の原爆で失われた命、生き残った子どもの奇跡が埋め込まれています。
母とともに母の実家の広島の「花浦」を訪れた直樹とゆう子。
母が仕事で九州に出かけている間に不思議な世界に入り込みます。
古びた家でイーダという女の子を待ち続けるイス。
自分がそのイーダだと思うゆう子。
謎解きとゆう子を現実に戻そうとする直樹。
謎の女性りつ子。
それぞれが重要な役割を果たしていて、りつ子が解き明かした事実はとても重いものでした。
8月6日という日に広島で何が起こったかを考えさせられました。
幻想的な趣向の話ですが、取材と実話に裏打ちされた話ですし、松谷さんの語りが心に響いてきました。
サスペンスの答えを出してしまうと申し訳ないお話です。
新装版としてあり続けるのですが、子どもにも入りやすい、そして大人にも感動のあるお話。
戦争、原爆を過去のものにしないためにも貴重な1冊です。
映画にもなっているようなので、視覚で確かめたいお話です。