子どもの頃、カルピスこども劇場で見た、「アルプスの少女ハイジ」。
毎週末の楽しみでした。
私にとって、ハイジといえば、あのアニメが全てでした。
それが、大人になって、原作に出会っての感想は、一言、「アニメとは別物」でした。
良くも悪くも、原作(完訳版)とアニメ(抄訳版)には歴然とした差を感じました。
物語の奥行きにせよ、広がりにせよ。
原作を読んで初めて、ハイジを始めとする登場人物の心の奥底の喜びや悲哀を知りました。
また、アルプスの自然の美しさや脅威を、身近なものとして感じることができました。
この『ハイジ』の訳者は矢川澄子さん。松居直さん自ら、依頼されたそうです。
訳というのは、単に日本語に直せばいいというものではないそうで、その物語をしっかり自分のものとして取り込んだ上で、自分の言葉で再構築する作業だと、松居さんは講演の中で仰っていました。
文章だけでなく、挿絵もまた素晴らしいです。
芸術的にも価値の高い一冊だと思います。