長谷川集平さんの作品は、絵にも文章にも心に響く独特な精神世界があります。
「叔父の浦山桐郎の思い出に」という添え書きに、何となく映画監督浦山桐郎との共通項を見つけたような気がしました。
二人とも生活の地べたから、心の奥深くから物事を鋭く見つめ、表現する、個性的な世界を持っています。
この絵本はフィクションではあるけれど、映画監督である桐一おじさんは、浦山桐郎本人でしょう。
精神的なショックで突然失明した樵は長谷川集平本人。
失明という特異体験の裏に、主人公の生い立ち、来歴に帰する長崎原爆や、キリシタンの殉教に対する強い拘りがあります。
そして、目の見えない主人公に絵本を読み聞かせするおじさん。
眼が見えるようになって確認したら、絵本などではなく聖書だったということも衝撃です。
実体のない絵本を作り上げたおじさんと、見えない絵本を心の中で形にした樵の想像力と創造力が、この話の骨格だと感じました。
他にも様々な象徴を散りばめながら、長谷川さんの精神史のような作品です。
ここまで自己分析した長谷川さんは、素晴らしいと思います。