子どものころから、なじみ深い作品です。が、
・男が(名前はありませんでした)鶴を助けた時に、猟師に銭を渡す。
・殿様の命令で妻(鶴)にはたをおらせる。
という部分は、私は初めてでした。
吉田さんの絵は、作品にとても合っている思います。
とくに、殿様に命令され、せめてあと1枚はたをおってくれないかと、妻に頼んだ時の男の表情と、それを言われた時の妻の表情がたまりません。
・妻を心配しながらも、殿様の命令だから仕方ない・・・、やってくれるな?
・本当は体が辛い・・・だけど恩ある大切な男のためならと・・・。
二人のそんな感情が伝わってくるような、印象的な場面でした。
男は確かに銭を得て、欲深くなってしまったかもしれません。
だけど、最初に鶴を助けた時、本来なら布団を買うはずの銭を、男は猟師に渡したのです。純粋に鶴を助けるために。
その部分に、少し救われたような感じがしました。
山下さんがその場面を物語に入れた理由が、わかるような気がしました。
ラスト、飛び立っていく鶴の後ろ姿と、ただただ見送るだけしかできなかった男の後ろ姿が、雰囲気たっぷりに描かれていました。
余韻が残る、切ない最後でした。