やまびこの聞こえるような山あいの村のお話です。
久しく山歩きをしたことのない私にとってはこれだけで素晴らしい設定です。
お母さんの病気のため、山に住むおばあちゃんの家に来たトッコ。
どうしても、山の友だちになじめない(友だちになろうとしたのかもしれませんが)、トッコは都会の自慢ばかりしてしまい、帰って山の子に反感を持たれてしまいました。
山の友だちと自分のあいだには谷川の上で揺れる吊り橋がかかっています。
自然の風景のようでありながら、心の中の風景のようでもあります。
山の友だちから愛想を尽かされて、ひとりぼっちになったトッコを救ってくれたのはやまびこ。
自分の声にこたえてくれるのは自分の声。
やまびこのこだまする山ほどすがすがしい清らかな山はありません。
目の前に現れた絣を着た少年はやまびこそのものでした。
少年に誘われて吊り橋を渡りきったトッコ。
少年は消えてしまいましたが、友だちと遊び合うことができました。
山の風景、少し昔のお話のようではありますが、古臭いお話ではありません。
転校生、初めて会う友だちと心うちとけるまでの吊り橋を、誰もが持っているのでしょう。澄んだ心で子どもたちの心を考えると、自分たちも山でいられるのでは…。