1995年のコールデコット賞オナー賞受賞作品。
残念ながら、現在は絶版となっているようです。
絵を描いたゼリンスキーは、1985年「Hansel and Gretel」、1987年「Rumpelstiltskin」でコールデコット賞オナー賞を、1998年「Rapunzel」でコールデコット賞を受賞しています。
全てグリム童話の再話ですが、未訳となっています。
「Rapunzel」は、2010年のディズニー映画「塔の上のラプンツェル」のこと。
訳は、落合恵子さん。
彼女が邦訳した理由が何となく分かる絵本だと思います。
「勇敢な男の子や力持ちの男の子、知恵のある男の子の話は、
これまでに沢山語り継がれ、描かれてきました。
けれども これは、勇敢で力持ちで知恵のある大きな女の子の
お話です」
と最初に書かれていますが、正にその通りの作品です。
時代は、1815年の西部時代。
主人公のアンジェリカは、生まれて2歳で丸太小屋を建ててしまいます。
12歳の時には、沼に埋まった幌馬車を引き上げたりと、スケール感は想像を遥かに越えたもの。
そんな時、現れたのが、「じごくのならずもの」と呼ばれる巨大な熊。
テネシー中の貯蔵庫を襲いからっぽにしてしまいます。
そこで、退治した者に、その毛皮を与え英雄として褒め称えるというお触れを出すのですが、荒くれ者の猛者に混じって、女性では、アンジェリカだけが参加します。
アンジェリカは、嫌味を言われるのですが、そんなの関係なし。
小気味良い返しの言葉に、すっとすることでしょう。
結局、猛者どもは、全員歯が立たずアンジェリカと熊が戦います。
空に投げ飛ばした熊が落ちてこないので、竜巻を使って熊を引っ張ったり、戦いの様子は、上から雲海に上部だけ見えたりと、その奇想天外な面白さは、言うこと有りません。
オチも納得のもの。
スケールの大きな話は、秀逸な出来栄えですが、絵も実に楽しめるものです。
本物の木を削った薄い板に絵を描いたようですが、西部開拓時代の雰囲気にとても合っています。
絵自体もかなり精緻に描きこんでいるので、色んな発見があります。
退治された熊の爪は、インディアン達が、削ってカヌーにしていたりして、そんなウィットもこの絵本の魅力だと思います。
非常に水準の高い絵本として、読み聞かせを是非オススメしたい作品です。