第15回日本絵本賞。その大賞に選ばれたのが、本書『カワセミ 青い鳥みつけた』です。
著者の嶋田忠さんはベテランの写真家で、この本は絵本というより、写真集という方が適切かもしれません。でも、コバルトブルーに輝くカワセミの写真につけられた嶋田さんの文章がとてもいいんです。子どもたちが川から突き出た石の上ですましているカワセミや川に勢いよくダイブしている写真に夢中になっているそばで、声にだして読んでみてください。
それは単にカワセミの習性をつづったものではなく、嶋田さんがどうしてカワセミに夢中になっていったのか、カワセミの写真を撮るのにどれほど苦労したか、そしてどんな工夫で水中のカワセミの様子を写真におさめることができたのかが、平易な文章でつづられています。
水中カメラが濡れないような専用ケースがあるのですが、嶋田さんは正直に「でも、高くて買えません」と書いています。嘘をつかない文章が子どもたちを夢中にさせます。
この本を読み終わった子どもたちは、カワセミを見たいと思うでしょう。しかし、子どもたちの夢はカワセミだけではないはずです。プロ野球選手、漫画家、宇宙飛行士、写真家、会社員、いっぱいいっぱい。
その夢を実現させるために、あきらめないこと、がんばること、工夫すること、そんなことに気づくのではないでしょうか。
なにしろ、「青い鳥」は幸福のシンボルなのですから。