日本各地に古くから伝わる怪異譚を、子ども向けに編集。18話。
田舎の民話、街中の怪奇現象、恨み怨霊系、ちょっとユーモラスな妖怪や地獄の使いなどもあり。能などの舞台や、落語などの話芸、映画やアニメなどにも登場するよく知られた話が多く、人気が高い演目を全部詰め込んだような豪華な内容。
人々が着物を着て、電気や水道もない生活をしていた時代の話。
素朴な挿絵が雰囲気を盛り上げる。
今は、テレビやインターネット動画、漫画などもかなり派手な描写になっているので、この本だと怖いというよりも、不思議な話という印象になるかもしれない。他人事の物語だと思ったら大したことがないかもしれないが、自分がその場にいて体験していると仮定して読み進めると、恐ろしさ倍増。
恐ろしい話ではあるが、単に脅かされるだけではなく、その場にいる人たちの人間関係や、社会事情(侍やお坊さんなど)、主人公の性格などが物語を面白くしてくれる。
個人的に気に入ったのは「ろくろ首」。豪快な話だ。
印象に残ったのは「おばけ車」。夜中に1つだけ車輪がある車で街中を走っていく異界の女の話だが、ちょっと寂しいような気分になった。百鬼夜行版・暴走族。
ほかに、古典芸能でおなじみの「安珍と清姫」「佐賀のばけねこ」などは、自分が知っている話とはずいぶん印象が違って興味深い。安珍と清姫の性格が、サイコパス風で怖い。生きているうちにすでに恐ろしい性格で、生きながら魔物に変化していく清姫の描写が、現代のストーカーや異常者による犯罪を思わせる。
結局、生きている人間が一番怖いのかもしれない。