ひと目で良い絵本とわかる本ですが、やはり絵がすばらしいです。絵本でここまで芸術的な絵を使ってしまっていいのだろうかとうろたえるほど美しい。どこかラファエル前派の絵画を思わせる静的で端正な絵は、感情的な面を排して描かれている分、かえって感傷的で強く印象に残ります。ダノウスキの作品が日本に紹介されるのは初めてということですが、この人の作品をもっと見たいと思いました。言葉もうつくしい。イギリスの散文詩のような詩的なことばのひとつひとつが、これも感情を抑えて淡々と綴られており、その語り口が深く心に染みわたります。その語り口の損なうことなく訳された訳文がいいのだと思います。
絵、文章、翻訳、そのすべてが見事に調和した作品で、これはもう絵本ではなくひとつの芸術作品。子供向けとか大人向けとか関係ない、全年代向けの傑作です。