ひつじは、友だちなのでしょうか?大切な人・・・家族、友人や兄弟、恋人・・・。ひとは長い人生のなかで、出会いと別れを繰り返します。別れ、去っていった人たち。手を離してしまったあの人・・・いつの日か、再会を果たすときがくるのでしょうか。人生の終わりに。あるいは、天国で・・・
これは、単に12か月の夢を描いた絵本ではありません。これは人生の旅。春の日もあれば雪や雨の日もあります。そのときどきで、人は夢を描き、願い、一人で、または誰かと、生きてゆきます。人間だけでなく生き物や石や空も夢をみるのでしょう。世界は、そんな夢の絵の具でできているのかもしれません。明るい夢、悲しい夢、厳しい夢・・・世界は、多様で無限で、夢のように掴みどころがない。だからこそ、ひとは誰かを願い、誰かと歩き、誰かと夢を語るのでしょう。
別れた人、去っていった友、そして、いまは亡き母・・・いつか再会できるのかな?いつか、自分もひつじに再会できるのかな・・・
読み終えてふと、宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』を思い出しました。「どこまでも一緒にいこうね」・・・
しみじみと涙があふれてきました。
絵の美しさはいわずもがな。しっとりと丁寧に入ってくる文章がまた秀逸で絵の雰囲気にぴったりです。まるで絵が語りかけてくる言葉のよう。
子供の読者はどんなふうに読むのかな?
でもこれは、むしろ大人に勧めたいぐらいの絵本です。