【内容】
ナイル川の河口付近のガンズール村に住む、11歳の少年アフマドの日常。気さくな父、料理が得意な母、仲良しの弟。エジプトの小学校の様子や村の市場や社交場、イスラムのお祈りや断食など。
日本人女性写真家が、現地の家庭でいっしょに暮らしながら取材した一冊。
写真・文:常見 藤代
【感想】
まず、イスラム社会なので、女性の外国人写真家が、普通の家庭の取材をすること自体が難しかった…という後書きを読んで、この本の貴重さを知る。学校への取材も、許可が下りるまで大変だったようだ。大変でしたね。
苦労の甲斐があって、素敵で、自然なエジプトの人たちの姿がばっちり撮れている。自分が村人の一人になって、実際に見たような感覚になる。観光地の情報は入ってくるが、普段の暮らしはなかなか知る機会がないエジプト。この本には巻末にちょっとだけピラミッドの写真があるけど、むしろ、その辺の市場や、イスラムの行事、普段の人々の暮らしぶりの方がよほど面白い。(観光地関係は、クイズ番組などでご堪能ください)
驚いたのが、アフマド君の忙しい一日。金曜日の休み以外は、学校の他に習い事がぎっしり。塾に通ったり、家庭教師が着たりして、とにかく教育熱心なこと。でも、写真で見る限り、無理にやらせている感じはなく、楽しみながらやっている風に見える。あと、兄弟仲が良く、家族や親類縁者との付き合いが濃厚で楽しそうなところが印象的。とにかく人と交流するのが大好きで、かならず誰かと一緒にいるような、明るい人たち。お父さんが「昔はスリムだったけど、お母さんのお料理がおいしすぎて太った」と言っている顔の幸せ満開具合。ぜひとも見て欲しい。温かい情愛に囲まれ、天国的な雰囲気が漂う。会ったこともないのに、既に親戚の誰かみたいな気がしてきた。勝手に親類だと思わせてくれる、吸引力が心地よい。
ちなみに、アフマド君の村では小学生はピンクが制服の色だそうで…