松尾芭蕉は有名人なので、あちこちで歓待を受ける。それをみたカッパは、芭蕉に化けて自分もご馳走にあずかろうと思ったが…
落語を聞いているとよく聞くような俳句ネタ。うっかりしていると聞き飛ばしている時もあるが、絵にしてみると本当に馬鹿馬鹿しい。耳できくユーモアが目で見る形に変換されるから、落語や古典の知識がなくても十分に楽しみ、味わえて便利だ。
芭蕉さんの有名な俳句を絵で表現したところは、素敵なイメージが立ち上がる。ユーモアとメルヘン、とんちが混ざったような独自の世界観が面白い。
松尾芭蕉、落語、カッパという言葉からして思い浮かぶイメージをよい意味で裏切る現代的な絵。漫画風のキャラクターは現代っ子向けで、愛らしい。昭和生まれでゲゲゲの鬼太郎で妖怪を知った私は、カッパというとおどろおどろしい印象が強いので、この絵本のようなかわいくて、せこくて、おバカさんのキャラクターだとちょっと肩透かしをくったような気持ちになる。だが、落語なので、ここは与太郎系の登場人物、ということで納得してみる。
このカッパは、大した悪さもせず、単にセコイだけなので全然怖くない。昔話や民話の河童はもっとアグレッシブに悪さ(というより犯罪)をして、人や馬を川に引きずり込んだり、尻子玉を取ったりして怖かった。カッパも時代とともに、ずいぶん物分かりがよくなり、となしくなり、小物になった。平和になった、ということだろうか。そのうち飼いやすいペットとして登場しそうだ。