宮沢賢治の作品というと、どこか異国情緒を感じるイメージがあります。
(『銀河鉄道の夜』や『オツベルと象』など)
『風の又三郎』も日本というよりもどこか海外やファンタジー世界の話のように思っていました。
(登場人物は日本名なのですが、花梨やクルミなどの名前、マンドリンを弾く先生の描写などで)
でも、やぎたみこさんが描いたのは、賢治が生きていた1900年代の日本の田舎の小学校風景。
かやぶき屋根に田んぼ、木造平屋の校舎に集うのは、和服やもんぺ姿の子どもたち。
先生は背広に丸メガネ、真ん中わけの髪型。
又三郎の世界がグッと懐かしく、身近に感じました。
(水に入るときはみんなふんどし一丁です)
授業風景、子ども同士の小さないざこざ、放課後の寄り道……、驚くほど平凡な当時の子どもたちの普段の姿が描かれています。
だからこそ、要所要所で描かれる風の表現が際立っていて、ぐっと不思議な世界に引き込まれるような感じがしました。
宮沢賢治の作品なので文字量は多く、使われている言葉も原文に忠実のため、読むのも聞くのもなかなか大変だとは思います。
でも、9月1日から12日まで日にちに沿って読んでいくなど、方法を考えながら読んでみるのも楽しいと思いました。
なにより、やぎさんの透明感あふれる絵を見ているだけでも、満ち足りた気持ちになれます。