【内容】
見栄っ張りで威張りんぼうの殿様が、お茶の会に行く。家来の太郎冠者は、お茶と刀と馬を借りに行くように命じられる。馬は後ろの方で人が咳をすると暴れるという癖をもっていて、もし暴れたら「しどうほうがく、しずまりたまえ」と呪文を唱えれば大丈夫だという。太郎冠者は殿様を馬に乗せ、早速お茶の会に出かけるが…和ワガママな殿様をやり込める、痛快なお話。
文:もとしたいずみ
絵:青山友美
狂言のミニ解説:野村萬斎
※「止動方角」(しどうほうがく)を、子どもに違和感なく楽しめるようつくった作品。
【感想】
バカでワガママで、見栄っ張りで、威張る上司というのは、いつの時代のどこの国にもいたようで。人間社会の基本的な構図は変わらないという真理を、狂言絵本シリーズは教えてくれる。
今回の太郎冠者は結構賢い、普通の人。(太郎冠者の性格は、作品によっていろいろあるらしい) 主人のワガママに付き合ってられないという、至極もっともな感覚と、日ごろのストレスを解消してやろうという遊び心に大いに共感。私も似たような場面に出くわしたら、早速やってみたい!きっと、大人は誰でも思うだろうと。
いや、子どもの世界もけっこうシビアだから、きっと溜飲を下げる幼児もあると思う。この話を読んで、自分の保育所時代に、「殿様(女王様)」と「家来」という関係で、「お友達」と言っていたあの人やこの人が思い浮かんだ。
いつの時代も、どこの場所でもこういう構図は普遍的に存在するのだ。年齢は関係ない。
ただ、最後にこの絵本の殿様は自分の愚かさに気が付き、威張るのをやめた。現実世界では、はたしてどうだろうか?自分も「殿様」になっていないか?