いささか古めかしいタイトルで、現代の子供たちが読みたい気分になるか、心配になります。
原作が英国で出版されたのが1951年で、石井桃子さんの翻訳で日本で刊行されたのが1977年ですから、その当時であればまだこのタイトルでも違和感はなかったのかもしれません。
今なら原題の「THE HOUSEWIFE」をそのまま使ってもいいような気がしますが。
こういういい作品は、色々な工夫をして、現代のたくさんの子供たちにも読んでもらいたいものです。
バーバラさんという独身の婦人の家に、そのねずみは住んでいました。
「女房」というだけあって、彼女にはご主人も子供もいます。
でも、このねずみはほかのねずみとちがっていました。
何がちがっていたかというと、今持っていない何かが欲しかったのです。
そんなめすねずみの住む家に、すなわちバーバラさんの家に、ハトがやってきます。
森でつかまえられたこのハトは鳥かごの中にいれられています。
そのかごにめすねずみは近づいて、ハトからいろんなことを教えてもらいます。
飛ぶということや、家の外のことなど。
そんなめすねずみをおすねずみ、つまり夫のねずみが「気にくわん」と叱ります。最後には暴力までふるいます。
それでも、めすねずみはハトのところに出かけつづけ、とうとう鳥かごからこのハトを逃がしてあげます。
ハトが飛び去った窓から、彼女は星を見ます。
多くのねずみが見ることのない、星を彼女は見ることができたのです。
女性の立場が現代よりもうんと拘束されていた時代、この一匹のねずみ女房の思いと行動に感銘をうけた人は、そしてこれからも受ける子供たちはたくさんいることでしょう。