総ページ332。児童書ですが、文体から見て小説といっても通るかと思います。今まで読んだ長編のものと比べると主人公は少し大きめの中学生。
転勤が決まった爽子は、11月と12月の間だけ、「十一月荘」という下宿屋で一人暮らしをすることになりました。たかどの作品の長編といえばファンタジーがほとんどなので、これもファンタジーかと思いましたが、爽子の下宿生活と爽子が生活の中から作り上げた「ドードー森の物語」が交互に紹介されていきます。
「ドードー森の物語」の話は、「くまのプーさん」のような童話。爽子自身の愛読書でもあるようです。「たのしい川べ」という本も爽子の好きなお話として紹介されているので、この作品のヒントとなっているのかもしれません。私は「たのしい川べ」を読んでいないので、言及できないのが残念です。
下宿の持ち主・閑(のどか)さん始め、苑子さんたちは、心地よい人間関係を営んでいます。爽子も身内のかせのない自由さを感じています。読んでいると、その心地よい空気感が自分の周りにも漂ってくるような気がしました。
周りの大人たちが、爽子を子ども扱いせずに、一人の人間として尊重しているのもその心地良さの要因であるのでしょう。
大人の今読んでも爽子の気持ちに共感できるものがありますが、中学生だった自分がこのお話を読んだら、読みながら爽子とどんな会話を交わしたのだろうと思いました。
たかどの作品は、どれも読書好きな人を満足させる内容だと思います。
例えば、大好きな書店に行くと、自分の好きな本ばかりが平積みにされていて嬉しいようなそんな気分です。
つんつくせんせいシリーズなら、「3びきのくま」や「うらしまたろう」を先に読んでいると、楽しみが増すように、この本なら「くまのプーさん」を読んでいれば、本を介しながら、作者と本について語り合っているような喜びを感じます。たかどの作品は、どれもお話っていいな、楽しいなと感じさせてくれます。