筒井頼子さんは林明子さんとの作品が非常に印象深いので、
梶山俊夫さんの描いた表紙から、昔話かお伽話のような先入観を
持ちましたが、お父さんの昔話を聞いた娘“かや”が現実で同じ体験を
しながらも、まるで夢のような体験の中で、お父さんが話していた
不思議な男の子と同じように、自分も“雨はこび”だったかもしれない
と気付く不思議さはお伽話なのかもしれません。
二年生になった娘“かや”とお父さんは最近すれ違いばかりでしたが、
とある日曜日に、お父さんは小さい時の思い出の沼に“かや”を連れて
行きます。
お父さんの昔話を聞き、秘密を共有したかのように二人の距離は近く
なりました。
次に“かや”が一人で沼に来た時は、お父さんから聞いていたように
この前は無かった道が現れ、その先には不思議な男の子がいて、
“かや”はその子と一緒にひとしきり遊びました。
でも帰った次の日から梅雨に入り、雨続きで沼には行けません。
そして梅雨明けしてから沼に来てみると、魔法にかかったように
また元の沼に戻っていました。
もう同じようには遊べないのかという残念な気持ちと、“かや”も
お父さんと同じ経験ができてよかった安堵と、もしかしたら“かや”は
昔のお父さんと遊んだのかと不思議な気分に満たされました。
“雨はこび”とは良い梅雨を連れているという言い伝えの子どものことで、
今と季節が合っていてとても入り込めました。
ちょっと長いお話しですが、長靴がぼっこぼっこと鳴りました とか、
水道から落ちた水が、ぱちん ぱちん ばらばら とか、擬音がうまく
表現され、繰り返しもありますので、子供も聞き入ってくれると思います。
少し自然に触れたことのある子どもや、最近自然に触れていない大人に
お奨めです。