ふしぎなかぎばあさんのシリーズの1冊ですが、この本を読み終わった途端に、すごい!と唸りました。
ちょっと不思議な話なんです。幽体分離を小学校中学年くらいからの子に分かるように書かれています。でも、実際は幽体分離ではないんです。
小さい頃から母親の言う事を本当に素直に聞いて、しっかり勉強してきたボクがある時、学校の試験で35点をとってしまいます。(ふしぎなかぎばあさんの話の中では、なぜか35点と言う点はよく出てくるんですよね!) それは前日まで香港風邪で高熱を出していたからだと本人は思いたいのですが、ママはそんなことを認めてくれません。そして、情けないの一言。
その時に、初めてボクの中に反発する自分が目覚め、塾に出掛けたのですが、そのままふらふらとゲームセンターに結局足が向いてしまいました。そして、そこで、ゲームに興じている一人の男の子を見てボクはびっくりしました。それは、もう一人のボクがゲームをやっていたからです。そしてもう一人のボクがゲームセンターを後にしたので、ついていくと、いよいよもう一人のボクは、ボクの家に向かい、ああ、一体どうなってしまうの?となった時に、もう一人のボクは姿が消えました。そして、何故かゲームをしていない僕のポケットに入っていたお金も減っていたのです。次の日も、またあのもう一人のボクが目の前に現れ、近所の年下の男の子に暴力を振るっているのです...
結局、その後にかぎばあさんが現れ、ギリシャ料理を作ってくれながら、ソクラテスの言葉を引用し、何が起きているのかを説明してくれるのですが、正直、幽体分離なんてすごい難しい現象を、こんなにも簡単な言葉で子供にも分かるようなストーリーにしているところが、本当にすごいの一言でした。そして、ソクラテスまで引用してくるところが、作者の手島さんがあとがきで書いているように、前作よりも優れた作品を書こうと言う執念に近いものが感じられ、見事結実しているなと思いました。
小学校中学年程度には、最初、ちょっと怖い感じがするかもしれませんが、その先に待っているストーリーをすごく知りたくなるような本で、とても刺激的な本だと思います。また、母親の立場としては、ついついボクのママみたいに、子どもに過剰ないい子さを求めてしまっているなと反省しきりです。
物語が読める人には年齢問わずに誰にでもお勧めな本です。もしかしたら、ふしぎなかぎばあさんシリーズの中では、1、2位を争う面白さのある本だと思います。是非、読んでみてください。