『ラプンツェル』は、グリムのお話として息子は小学校低学年かそれ以前に知っていたお話です。
「ラプンツェル、ラプンツェル、その髪を下しておくれ」
魔女のこの言葉だけが耳に残っているのですが、私にとっては初めての対面です。
それにしても内田也哉子さんの作品を読んでびっくりしました。
内田版『ラプンツェル』は恋をテーマにした、ヤングアダルト感覚の童話です。
図書館のグリム童話集の訳をいくつか読み比べた時に、内田さんの脚色のすごさを痛感しました。
さらりと語ってしまうと、魔女の庭にある野菜のラプンツェルに魅せられた妊婦が、夫に頼んでそのラプンツェルを取り行かせたところが魔女に見つかってしまうくだり、ラプンツェルと引き換えに生まれてくる子どもを魔女に差し出すことになってしまうくだり、魔女に引き取られ閉じ込められた娘ラプンツェルが通りかかった王子と恋仲になるくだりといくつかのパートが重ねられていくのですが、それだけならば今までに手にした童話にも近い展開はあったかと思います。
魔女、王子、かわいそうなお姫様という登場人物も童話にはあふれているかと思います。
それが、内田さんの手にして、情感表現に深みを持たせたときに、生々しいお話に変わっていくのでした。
イラストレーターの水口理恵子さんの絵も情感たっぷりで、ラプンツェルを肉感的に表現している感じ。
この絵本は、高学年から大人に向けての絵本になっているかと思います。
そういえば、水口さんの絵に親しみを覚えたと思ったら、東野圭吾の小説やいろいろな書籍のカバーで書店の平台を飾っている人だったのですね。
グリム童話を超えた絵本です。