不思議な魅力のある本でした。
赤いレインコートを着ている女の子が赤い傘をさそうとしているところから始まる絵本で、
その女の子が外に出た時から、言葉が始まります。その言葉が、本当に楽しそうな雨の音
なんです。
あめが つんつん ぴっつんつん
つんつん ぴっつん ぴっつんつん
ちゃぷちゃぶ ぱちゃぱちゃ
ぴっつんつん ぴっつんつん
一人だった女の子が、次々と違う色のレインコートを着て傘を持った子達に出会っていき、
(と、ここまで書いてからふと思ったのですが、女の子とは限らないかも知れませんね)、
そこに書いてある言葉が、楽しい雨のようにどんんどん“はじけて”いって、とても絵と言葉が
ぴったり合った絵本でした。
途中で、黒いレインコート・黒い傘の子が現れて、一瞬、この子は悪魔役?
って思ったけれど、そうきたか! という展開でした。
この絵本は、「雨の音」がメインの言葉なのですが、あまりにも絵と言葉がぴったりなので、
いつも私が感じる疑問にぶつかりました。
絵を描く人と言葉を書く人が別々の人なのに、一体どっちが先に出来たのかな? と。
実は、この本は図書館で借りてきたのですが、図書館もオツなもので、この本に付随していた
小冊子をそのままつけていてくれ、そこに私の疑問を見事に晴らしてくれた回答が書いてありました。
この本は3人の人のインスピレーションの賜物で出来た本だそうです。
構成として名を連ねている後路好章さんが画廊で初めて見た、もろかおりさんのレインコートを着て傘をさしている子の絵に惹きこまれて、絵本を作らないかと声を掛け、その絵を沢山描き溜めてから、武鹿悦子さんに言葉を付けてくれと依頼したそうです。
絵と言葉のあまりのピッタリさに、ほとほと感心しました。
色鉛筆で描かれた、もろかおりさんの絵がとても可愛らしく、そして、
武鹿さんの子供にとっての雨を見事に表現しているところが、随分前から、雨なんて鬱陶しい
だけのものだと思うようになっていた自分に、
「そうだったよね。子供の頃は雨も楽しい日の1日だったかも」と思い出させてくれました。
そして、これまでは雨の音というと、「ザーザー」とか「パラパラ」という定着した言葉
だけでしたが、「ぴっつんつん」という音が新たに加わりました。
2歳くらいからの小さい子でも十分に、絵と音の美しさが楽しめる絵本だと思います。
そして、雨の日の気分を楽しくしてくれる絵本です。お奨めです。
是非、一度、読んでみてください。