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前世が無念の死を遂げた武将だった、百姓が主人公のお話。 テーマとしては、身の回りの混乱を引き起こしている原因である「無意識の うちに抱えている恨み」を意識化して解放することによって、平穏で心穏やかな 日々が訪れる、というものでしょうか? でも、テーマよりなにより、読んでいると心の深いところに小さな石が投げ込まれた かのように、ズーンと響いてきます。読後しばらく、その反響というか、静寂が 自分の周りにしばらく残っていました。 このお話、後世まで読み継がれるといいなと思うのですが。
投稿日:2017/07/28
輪廻転生をベースにお話が積みあがっていきます。 前世の記憶をもつ主人公が、蟹を助けます。蟹の恩返し?と思ったら・・・・。 ほっこりするお話かな?と油断させておいて、ずーんと深いお話が潜んでいます。 挿絵が油絵で書かれているようで、1ページ1ページが絵画のようです。 中学の読み聞かせで読もうかと思い、まずは小学生の息子たちに読んで聞かせてみました。 「恨み」は、持っていてもいいことはない。 最初の方で登場する、理不尽な名主に対して憤っていた息子たちですが、お話が進むにつれ、静かに聞き入っていました。前に進むためには、「恨み」を手放さなければならない、というメッセージでしょうか。。子どもたちには届いたようです。
投稿日:2011/02/13
寝ていたとうきちを誘う蟹の行軍。 庄屋の息子が沢蟹の足をもいで遊んでいるのを、見咎めて放してやったことに対しての逆恨み。飼い牛をとりあげてしまった庄屋への抗議の姿勢であったのであろうか。 とうきちは前世を薮内七右衛門として敵と戦う武将であったという。 庄屋もまた敵方の大将であった。 蟹もまた前世に起きた戦国の闘いで、七右衛門を慕う兵士たちであったのか。 因縁話と蟹達の恩返し。 木内さんの重厚な油彩を従えて、梨木さんの話も濃厚なロマネスクである。 ヤングとアダルト世代にお薦めの一冊である。
投稿日:2010/09/12
昔話風のお話なので、蟹の恩返しかと思ったのですが、前世からの因縁、今世で果たすべき使命などが絡み合ったお話で、惹き付けられました。 とうきちが助けた蟹が、前世の記憶への案内役をしています。 「七右衛門は愛情が人一倍強く、そのため怒りや憎しみもまた強い力を持っていたのでした」という言葉に惹かれました。 心の中で、積もっていくよどんだ気持ち、恨み・憎しみなど癒すのが難しいように思いますが、その気持ちに執着し続けていると、抱えきれないほどの苦しさになっていくように思います。 前半の暗さと反対に後半では魂が浄化していくような感じを受けました。 読んだ後、強い印象が残ります。
投稿日:2008/10/12
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