なかなか興味深い話でした。
と言うのも、前知識もなく読んでしまったので、“メロウ”とは、せなさんの貼り絵を見て、
アザラシかオットセイかと思っていましたが、アイルランドに伝わる人魚だそうです。
あまりの不思議さに調べてみたところ、男のメロウ(Merrow)は緑色の肌であること、
鼻が赤いこと、海中の中をもぐる三角帽子(コホリン・ドリュー:cohuleen driuth
という名前だそうです)が赤いのは全て伝承に忠実にされているのが分りました。
その帽子のおかげで、海の中を通り抜け、また海底に地上と同じように空気のあるところ
があるという世界観、そして、海でおぼれた漁師の魂が冷たい水の中で迷っていて、
それをメロウがエビ捕りで使うカゴの中に入れるという“魂の檻”の存在が、ちょっと
肌寒い感じが伴いますがとても興味深く、面白かったです。なんかとてもケルト色の
出ている伝承だなと感じました。
せなさんの絵本が貼り絵なのは有名ですが、特にこの話の中では、主人公の漁師の男
ジャック・ドガティーの魚の網や海の白波に、紙の素材を有効に使われているのが、
とても目を見張りました。(主人公はジャックではなくて、メロウかもしれません!)
また、ジャックが“魂の檻”を一度見てしまってからどうしても気になってしまい、
その魂を解放させてあげたいと思って、策に出て、そしてとうとう逃がしてあげる時に、
「たましいは みえないんだなあ。でも どうか ぶじに てんごくに
いかれますように」
と祈るところが、また宗教心やら人生観を感じることが出来て、これまた興味深かったです。
6歳の息子には、とても不思議な話として聞こえたみたいです。でも、それで、よいと
思っています。アイルランドの神秘さを垣間見る1冊でした。
結構、お薦めです。是非、読んでみてください。