2〜3歳位の幼児さん向けのおはなし会用に、秋を感じさせる絵本を探している中で見つけました。
図鑑のようなリアルな絵で、動物たちとその食べ物の様子が描かれています。かじられた跡のあるクルミなど、きちんと観察された上で描かれたであろう絵に、その場にいた他の2人も納得の上で選びました。
この本は読みかたりには使わず紹介のみする予定でしたので、こちらのサイトも参考にさせていただこうと思って開いてみました。そしてあまりの評価の分かれ方に驚きました。
実際に本を読んで、モズのはやにえ、小鳥が捕まっているところ、その辺りが残酷に感じられるのも分かりました。
しかし、私はこの絵本を子どもたちから遠ざける必要性は感じませんでした。
なぜなら、ひとつには、子どもと大人とではものの見方、感じ方が違うからです。
長くなりますので詳しい説明は省略しますが、一例を挙げます。私たちにとって、なぜ小鳥が食べられるのが残酷で、魚の活け造りはそうでもない(中には残酷!と感じる方もいらっしゃるかもしれませんが)のでしょう。ひょっとしたらタカに踏みつけられている小鳥を魚に置き換えたら、視覚的にショックを受ける大人は少ないのでは?
このように「残酷さ」というのは、ある程度成長していく中で身に付ける文化的なものもあるのではないでしょうか。
ふたつめに、この絵本では、「捕食」という見え方によっては残酷に見えるシーンを、子どもが読むものとして最大限配慮して描いてくれていると思うからです。
モズのはやにえは、昆虫の顔が見えない角度から描かれています。タカに捕らえられた小鳥は、少し血が付いてはいるものの、食い散らかされる前のきれいな姿です。フクロウに食べられたネズミも、ペレットの状態で、怖さよりもむしろフクロウの独特の生態に関する知識に興味が持てるようになっています。
この本を私と一緒に選んだ一人が言っていました。小さい子が、庭先や草むらでモズのはやにえを目撃しないとも限らない、と。だから隠す必要はないだろう、と。
子どもがそのような自然に触れるのはおかしなことではありません。その時にこの絵本のことを思い出したら、ああこれはモズの食べ物なのだと、不必要に怖がらなくて済むということもあるかもしれません。
自然をありのままに描くということは、厳しいようでいて実は優しいのではないか、そんな気がします。
絵本を読む時は、読み手がその絵本に持っている印象がそっくりそのまま聞き手に伝わるものだと、経験を通して実感しています。
ですので、この本を「残酷だ」と思われる方は子どもさんにこの本を読んで聞かせない方が良いでしょう。
取り扱いの難しい本かもしれませんが、私はきちんと子どものことを考えて作られた絵本だと感じましたので星5つにします。
ところで、娘が幼稚園でこの本を読んだことがあったとのことでしたので、当時の印象を聞いてみました。「面白い科学絵本だったよ!」とのことでした。