有名で誰でも知っている昔話といえば「桃太郎」や「一寸法師」。
勧善懲悪のわかりやすさと物語りの躍動感が誰にでも親しまれ、
語り継がれていると思うのですが、一方でこの「つるのおんがえし」のような
物悲しくて静かなお話も長い長い間皆に愛されているのだから、
日本人っていいな〜と思います。
私はつるのおんがえしは30年前に幼稚園の劇でやりました。
だからなのか、昔話の中でもひときわ愛着があります。
子供心にも、つるの一生懸命、自分を犠牲にして相手に尽くす姿
は悲しい反面美しかったし、最後につるが飛び立っていってしまう
姿は胸がぎゅっとなる感じでした。
ちなみにその時は台本だったし、親からの読み聞かせも口頭だったと思うので
特に挿絵に関する思い出やイメージはありませんでした。
でもこの絵本の水口さんの挿絵を見た途端、30年間漠然としていた
イメージがぱあ〜っと極彩色の情景となり現れました!
子どものときにこの絵を見ていても特になにも感じなかったかも
しれませんが、大人になってあちこち旅行をしたり日本の良さを
感じ取ったりしたあとに見たことで、「まさにつるのおんがえしの世界はこんな感じ!!」
と思えるようになっていました。
まさに自分のもつ「つるのおんがえし」の繊細で物悲しくて
相手を思いあう気持ちが表現されていてとてもうれしかったです。
これからこの絵本で「つるのおんがえし」を覚える子供たちには
「とんとんからり とんからり」という文章とともにこの挿絵を
ずっとずっと心にとどめていてほしいなあと思います。