このお話はたくさんの絵本作家さんによって描かれていますが、私は福音館の、フェリクス・ホフマン絵の、まさにこの絵本を読んで育ちました。「おおかみと七ひきのこやぎ」といえば、これしか浮かばないという感じです。
色遣いは質素で、よくよく見れば地味な印象だけど、深みがあって、細部までこだわって描かれているのが分かります。可愛いばかりではない、リアルな描写に私も子供のころは、幼いながらに惹きつけられて見入っていたのを覚えてます。
グリム童話には残酷な部分があります。このお話も然り・・・。
最後に「おおかみしんだ!おおかみしんだ!」と、やぎたちが踊るのは、やっぱり今も賛否両論あるみたいですね。
おおかみがヤギを食べるのは、いわば自然なこと。自然界は弱肉強食なのですから。肉食動物が草食動物を食べないとバランスは崩れてしまいます。
だけど、おおかみに子供を食べられて悲しむ親がいるのは当然。できることなら取り戻したいと思うのも自然なこと。
だけど、子供たちを取り戻した後も、おおかみのお腹に石をたくさん詰め込み、そしておおかみが溺れ死んだことを、踊って喜んでいいものか、それは疑問が残ります。
今と昔では時代も、子供たちをとりまく環境も違っていますよね。「おおかみしんだ!」というその言葉、踊るというその行動が、現代の子供たちにどう受け止められるのかは、正直ちょっと不安もあります。でも私はこの絵本を子供に読んでいます。無理やりハッピーエンドにねじったお話ばかりを聞かせていては何も培われない。こうした、残酷な話を、子供たちがどう受け止めて、それをどう消化するのかは、子供たちにまかせるしかないと思うんです。
たぶん、大人が誘導するものではないかな、と。