ちいさなかがくのともの絵本です。
題名の「ながーい はなで なにするの?」のとおり、ぞうさんが鼻を使って何をするかの絵本なんですが・・・
全然、かがくっぽくありません。
母親ゾウと子ゾウの温かな親子のやりとりの風景が描かれているんです。
表紙は、子ゾウがお母さんの尻尾を鼻でつないでいます。
見開きのページでは、母と子が、鼻でお互いを触りあっています。
ページをめくっていくと、鼻でエサの草を集める母と子。
そして鼻でエサを巻き、食べる母と子。
鼻で水を飲む母と子。
そしてゾウの母と子は鼻を使っていろいろなことをするのですが、
母親ゾウの子どもを見るまなざしの優しいこと優しいこと。
そして子ゾウもお母さんが大好きなんだということが、目から伝わってきます。
子ゾウは、自分の鼻を使っていろいろなことをやってみて、「みてみて とっても じょうずでしょう」などと、そしてそれを温かくお母さんが見守っているんです。
ゾウたちの色もすごくきれいなんです。
一般に、ゾウを描く時は、灰色一色だと思うのですが(色の濃淡はあるでしょうが)、オレンジや紫や青?多彩な色が使われているんです。
貼り絵の技法で描かれているそうです。
白い紙にゾウの下書きを描き、切り取る。そしてゾウの形の紙に、何度も何度も色を塗り重ね、たくさんの色が重なり合い、混ざり合い、ゾウらしい重みのあるグレーになるまでこの工程を続けていったのだそうです。
折り込みふろくの作者のことばに、「絵を通して、ゾウの温かな手触りを感じていただければうれしいです」とあるのですが、はい、しっかりと感じさせていただきました。
作者の齋藤槙さんは、貼り絵の手法を用いた動物作品などで、個展などで活躍されている、20代の方なのだそうです。
絵本は今回が初めてとのこと。素敵な絵本作家さんの誕生ですね。今後も、いろいろ絵本を手がけていただきたいです。
うちの娘は普通に楽しんでいますが、この絵本は、私がすっかり気に入ってしまいました。(私は動物ものは、基本的に苦手なのですが)
【事務局注:このレビューは、「ながーい はなで なにするの?」ちいさなかがくのとも 2009年11月号に寄せられたものです。】