オランダの誇る「かえるくんシリーズ」の1冊で、よそものに対する偏見を扱った絵本でした。
表紙を開いた題名の書いてあるページの反対側にこう書いてあります。
同じ地球にくらす ありとあらゆる生きものたちに この物語を おくります。
この言葉がまさに作者がこの絵本にこめた思いを伝えていると思います。
ある日、かえるくんたちが住む所に、旅のねずみがやってきて、森にテントを張りました。
それを最初に見つけたこぶたさんが、かえるくんたち、仲間に警戒を促します。
ねずみが勝手にテントを張っている! ねずみだから汚いし、物を盗むわ!と。
ところが無垢なかえるくんには意味が分らず、よそもののねずみに興味津々。
自分の気持ちに正直になり、ねずみとの交友が始まります。それをよく思わない仲間。
でも、そんな時にこぶたさんの家が火事になり、火を消してくれたのがねずみでした。
また、別の日には川でおぼれるうさぎさんを助けてくれたのもねずみでした。
みんなはそれ以降、ねずみが大好きになりました。でも、ねずみくんは、また旅立って
行きました。という話です。
大人から見ると、いつだって、この世界のいたるところで起きていることを、そのまま、
ありがちな事例を踏んで描いてあるだけなので、新しいことでなく、むしろ、聞くと
耳が痛い話かもしれません。でも、かえるくんのようにまだ無垢で偏見のない子供には、
こういう話で啓発することは効果があるのかもしれませんね。
オランダは移民が多いから、作者マックス・ベルジュイスが杞憂し、冒頭の願いを込めて
この絵本を描いたのでしょうか? そんな気持ちが感じられる絵本でした。
下世話なことですが、自分の子供には、この登場人物の中でどれになって欲しい?と
聞かれたら、かえるくんのように偏見のない人になってもらいたい気持ちと、逆に、
旅のねずみのように、偏見やら困難を打開する自分自身を守れるスキルや経験、
気持ちを身に付けて欲しいと願います。
かえるくんシリーズって結構、社会的なテーマも扱っているんだなと改めて思いました。