主人公のペドロ(推定1歳)は「キト号」が大好き。一日一回の「キト号」の到来を待ちわびて、その姿見つけけると「ダダダダ!」と、唯一しゃべられる言葉で、お雄叫びを上げます。
ある日家族で駅までに行った時、目を離した隙にペドロが「キト号」に乗り込んでしまい、そのまま発車してしまいます。エクアドルを縦断する長距離鉄道の「キト号」は、延々とヘドロの町から離れて行ってしまいます。今生の別れか、アンデスでの過酷な旅を思うと『母を訪ねて三千里』を連想しますが、まだ赤ちゃんのヘドロは、自分の置かれた状況に不安を感じることもなく、親切な大人たちに助けられて、飄々と鉄道旅を満喫しているように映って、羨ましく思えました。。
舞台になっているのは、赤道直下の国エクアドルです。燦々と太陽が照りつけ、“白く”そびえ立ったアンデス山脈の麓の、“緑”のジャングルを抜けて、“真っ赤”な機関車「キト号」が走しる情景が、ページから浮き出て、広がっていくように想像しました。
実はこの絵本、作者が旅したアンデスをイメージして、“土色”一色で描かれています。
世界を旅しながら、我流で絵を完成させたベーメルマンスの絵は、一見ラフなデッサン画にも見えてしまいますが、何十回と納得いくまで書き直したと、あとがきにありました。色のない分、自由な想像で、何度でも読むことができそうです。
もう一つ、表紙に描かれている“2羽のにわとり”の描写がとっても面白いです。