「すずの兵隊」は、言わずと知れたアンデルセン童話。
1838年のクリスマスに発表されています。
その作品の再話に絵を描いたのは、フレッド・マルチェリーノ。
彼は、1991年の「ブーツをはいた猫」で、コールデコット賞を受賞しています。
物語は、
「むかし、25人のすずの兵隊さんがいました。
みんな兄弟でした。
おなじ古いスプーンから、つくられたのです」
という書き出しで始まります。
そして、ただ1人の兵隊さんには足が1本しかありませんでした。
最後に作られたので、すずが足りなくなったからなのですが、その発想が素敵です。
この兵隊さんは、紙でできたバレリーナの恋するのですが、後ろに足を上げているので同じ片足にしか見えないというのが、大きなポイントでしょう。
また、紙で出来ているというのが、大きな伏線となっています。
それにしても、この舞台となっている家は、大変なお屋敷です。
そこの住む人たちの豊かさと、飾られているだけの人形達の対比もまた、見事なものと言えると思います。
すずの兵隊さんは、小おにの企みによって、外の世界に放り出されてしまい、息もつかせぬ冒険が繰り広げられます。
その冒険活劇は、なかなかスリリングで、かなり惹きこまれてしまいました。
そして、数奇な運命に導かれて元のお屋敷へと戻るのですが、これでハッピーエンドでないのが、アンデルセン童話たる由縁といったところでしょうか。
悲しく切ないエンディングは、読み手の心を打つに違いありません。
原作を良く覚えていないので、どの程度忠実な作品かは分からないのですが、ストーリー以上にフレッド・マンチェリーノの描く絵が、中心となっている作品です。
絵が物語るとは、まさにこのことであって、絵の中にさまざまなストーリーを見出すことができるでしょう。
何度見返しても、この絵の奥深さに感動せずにはいられない、そんな作品です。
クリスマスに読むに相応しい作品として、オススメです。