建築デザインを学んだ方らしい、その技術の凝縮された精緻な作品だと思います。
舞台はイタリア。
古い教会のかべの塗りかえ職人アンジェロ。
年老いてはいるが、大好きな自分の仕事に一生を捧げてきた。
ある日、いつも作業の邪魔になるハトを一羽見つけた。
だがそのハトは、傷ついていた。
孤独な一人暮らしの家に心ならずも連れ帰り、ハトを手当し、やがてアンジェロとハトの間に、言葉を介さない友情が生まれ…。
足場を組んだ教会や休日に訪れる遺跡、そして他の建物の描写を見て、『カテドラル』−最も美しい大聖堂のできるまで−等の、素晴らしい作品を思い出します。(1991年『Black and White』で、コールデコット賞金賞を受賞)
アンジェロという主人公の命名も、ミケランジェロを想起させられました。
傷ついたハト(シルビア)が横たわるベッドのページで、、息子は「すご〜い。」と感嘆の声をあげていました。
終盤、年老いて行くアンジェロを見守るシルビアと、自分亡き後のシルビアを心配するアンジェロの姿に熱いものがこみ上げてきます。
教会と調和したシルビアの新しい家は、アンジェロの残したあたたかい最後の芸術だと思いました。
小学校中学年頃から、一人で読み楽しめる作品だと思います。