ロシアの民話をもとにトルストイ流にアレンジした「トルストイの民話」の一編です。
暮らし向きははかばかしく無くとも借地農のパホームは、作物を作る生活に誇りを持ち、生き生きと働いていました。
義姉の訪問で、自分の土地を借金をして手に入れます。
その後、懸命な努力で借金を予定より早く返済すると、2倍3倍と土地を広げていきます。
一方、パホームの土地に入り込む他人の家畜に目くじらを立てる、心の狭い人間へと変わっていきます。
パホームの土地所有欲は留まることを知らず、…。
人はみな幸せな人生を望みます。
幸せには“豊かさ”が大きな要素です。
“豊かさ”とは、満ち足りて余裕のある状態。
“足を知る”落ち着いた次元にあることです。
ものに対する際限のない欲望は、心の落ち着きを失わせます。
時に、パホームのような悪魔の声を聞き分ける冷静さも。
そこに“豊かさ”はありえません。
ものの豊かさの前に、心の豊かさに重きを置いた生き方をしていきたいと、つくづく教えられる作品です。
柳川先生は、原作を絵本用に縮め、明解な文体になさっています。
特に最後の召使いの一言は、この作品の趣旨を著す、痛烈なシニカルな言葉です。