誰もが知っているお話ですが、読み返してみると、単純でありながらとても意味深い話です。
極悪人のカンダタがただ一度、踏みつぶそうとした蜘蛛を殺さなかった「善意」をお釈迦様が認めて、地獄にいる彼に蜘蛛の糸をさしのべます。
どんなに悪い人間にも良心があるということでしょうか。悪行を尽くしても救われるという宗教の話でしょうか。
お釈迦様の好意は、カンダタには伝わりませんでした。
地獄のおどろおどろしさと、極楽のおだやかさ。他者を蹴落としても救われようとする人間の性。
自分を守ろうとするのは人間だれもが持っている本能です。だからこそとても怖いお話です。
遠山さんは、物語を絵の中に塗り込めることで、この物語をとても強烈なものにしました。
文章だけではなく、絵で語っているからです。
地獄の風景、蜘蛛の糸を伝ってあとから登ってくる亡者たちの表情は怖いくらいです。
そして、対比するように極楽のおだやかさ。
低学年には少し刺激の強い作品となっているかもしれません。