ヤマトシジミの食卓だと、石を懐かしむ老人。
その老人を「拾って」帰ったかんこちゃん。
話は突飛な形で始まります。
風助と名乗った老人は、かんこちゃんの家で「飼われる」ことになりますが、その風助さが姿を消して月日が経った後に届いたおじいちゃんの死亡を告げる通知。
謎解きのようですが、読んでいて自分もしみじみとしてしまいました。
かんこちゃんのお父さんは、一人暮らしでいた自分を父親が死んでしまって、その面影を風に描きます。
(母が亡くなったときに、一緒で暮らしていければよかったという負い目もあります)
その風助さんが、ヤマトシジミの食卓だと説明した足踏み石と何十年前の思い出のはなしは、かんこちゃんの心で神秘的に拡がっていきました。
友達づくりが苦手なかんこちゃんにとって心許せた友達が海外に引っ越していきました。心の寂しさの中で、いろんなものが成長していきます。
かんこちゃんの一家、知り合ったかおちゃんとのメルヘンだと感じました。
風助さんは、足踏み石のあった家で、かつて一人暮らしをしていた人でした。
離婚して一人になって、その家を出て社会的に成功して、身内のないままに老人ホームに入ったとき、自分のとても大事なよろどころとして思い出した場所でした。
ヤマトシジミというシジミ貝に似たチョウの群生する庭。
風助さんが言う神話のせかいと現代を結ぶ幻想的な舞台が、とても素晴らしく心に響きました。
不思議な作品です。