アメリカに「コールデコット賞」という有名な絵本の賞があります。
これは、アメリカ図書館協会が,アメリカで出版された絵本の中でその年のもっともすぐれた作品に贈る賞で、1937年に創設されています。
賞の名前は,19世紀の絵本画家,ランドルフ・J・コールデコットからとられています。
ウィリアム・スタイグ作のこの絵本は1970年にコールデコット賞を受賞しています。
受賞の際のスタイグさんのスピーチが巻末に収められています。
そのスピーチの中でスタイグさんはこんなことを話されています。
「児童文学をふくむ芸術は(中略)謎を謎としたままで人生について知ることを助けてくれます。(中略)そして不思議だと思うことは、人生に敬意を払うことにつながります」と。
絵本の主人公は、変わった色の小石をあつめるのが大好きなロバのシルベスターくん。
ある日、彼は小さな、魔法の小石を見つけるのですが、まちがって、自分が石になる魔法をかけてしまいます。
家に帰らないシルベスターくんを心配してお父さんもお母さんも、村の動物たちも一生懸命探すのですが、まさかシルベスターくんが小石になっていると思いませんから、見つけることができません。
季節がめぐって、新しい春になりました。シルベスターくんの両親は悲しみから抜け出そうと、ピクニックにでかけます。
そこには小石にかわったシルベスターくんがいます。
さあ、お父さんお母さんはシルベスターくんに会えるでしょうか。
絵本にはどんな魔法もありません。
最後に誰もがよかったと思えることこそが大事なことではないでしょうか。
スタイグさんはそんなことを描きたかったような気がします。