絵本作家五味太郎さんの功績は大きい。
私の娘たちがまだ小さかった頃、もう30年近くになりますが、五味さんの絵本でどんなに楽しませてもらったことか。
独特な絵のタッチ、勢いのある言葉、それはもう子どもそのもの。
生きる強さのある絵本です。
だから、五味さんの絵本は懐かしいし、今でも大好き。
私にとって、五味太郎さんは欠かせない絵本作家です。
この絵本のタイトルがいい。
「むかしのこども」って、いつのこども?
読んでいる子どもたちにとっての、お父さんやお母さんが子どもだった頃。
今の子どものお父さんとかお母さんは、昭和という時代の終わりのあたりの子どもでしょうが、この絵本の「むかしのこども」はおそらく昭和30年代とか40年代あたりではないでしょうか。
ちなみに、五味太郎さんは昭和20年(1945年)生まれです。
「むかしのこども」はよく「ぐずぐずしないで」といわれました、とあります。
それは、「むかしの暮らし」がいそがしかったから。
そういわれれば、そうかもしれません。
洗濯機とか車とか便利なものが普通の家庭にもはいってきた頃ですが、逆に背中を押されるようにいそがしくなったのはどうしてでしょう。
人は便利さを発明しながら、ちっともゆったりとしない、変な生き物です。
「むかしのこども」には「むかしの大人」はとってもしっかりしているように見えました。
でも、この絵本を読んで少しわかったのですが、「むかしの大人」は「こどもは小さいしぼんやりしているから、ま、適当でいいだろう」と、考えていたからかもしれません。
今の大人はとってもいい大人で、子どもにもきちんと話をしてくれます。難しい言葉でいえば、子どもの人格を認めてくれています。
そのせいで、いまの大人はあまりしっかりしているように見えないのかもしれません。
おかしいけれど。
いまの子どもも何年か経てば「むかしのこども」になります。
その時に、そういえばあの時はこんな時代だったと思い出すのは、あなた(読者)自身。
五味さんのこの絵本のように、「そんなむかしでも精いっぱい、元気に楽しく暮らしていました」と書けるでしょうか。