芥川龍之介は好きな作家です。この蜘蛛の糸はやや教訓的に見えるかもしれませんが、人間の業を短編の中にぎっしり詰まっています。主人公のカンダタは人間界にいるときは確かに悪党だったけど、蜘蛛を一匹助けます。誰でも人間は完全な悪党はいないし、完全な善人もいません。死んでもし地獄や極楽があったら、どの人間にも両方の道が待っているのです。もし地獄に落ちて、血の池地獄であっぷあっぷしていて、蜘蛛の糸が垂れたらだれでも助かりたいから同じことをします。私も同じことをするのじゃないかなぁ。そして地獄落ちするのです。人間の業を宗教臭くなく物語として見事に描いた傑作です。