作者は片山令子さんですが、スズキコージさんの絵と字体なので、どうもスズキコージ作品のような気がしてしまいます。なので、つい何か妙な展開になるのではなどと余計な詮索をしながら読んでしまいましたが、極めて真っ当なお話でした。
遠くへ仕事に行くお父さんの乗る汽車を見送っている「ぼく」。そして、お父さんがいない間は、いつも、おもちゃ屋さんのウィンドーに飾ってある、お父さんの乗る汽車そっくりの汽車のジオラマを見に行きます。
ウィンドーの中の風景が変わるのを見ては、お父さんに思いを馳せますが、ウィンドーの中の風景が何度も変わって、とうとうお父さんが帰ってくる日がやってきます。
遠くへ出稼ぎに行くお父さんと、お父さんを想う子どもの姿を、重苦しくなく描いていて見事です。スズキコージさんの絵もどっしりと重厚で、この正統派のお話にとてもマッチしています。
おもちゃの汽車が、お父さんと「ぼく」を繋ぐ拠り所のような役割を果たしていて、お店の中で走っている姿が、スポットライトを受けたみたいに輝いて見えます。
15年も前に出版された本ですが、古臭さなどなく充分読み応えがあります。