【内容】
フィリピン、ルソン島北部のイフガオ族の村に住む7歳の少年、ネリ。兄弟4人と父母との日常を、写真で紹介する。学校に行き、みんなで遊び、いとこの家にいき、お休みには市場に行く。日曜には教会に行く。巻末にはフィリピンの概要、歴史や産業なども簡潔にまとめられている。
写真・文章:石川直樹
【感想】
一度も行ったことがないのに、不思議な懐かしさを感じた。山の急斜面にへばりつくように家を建て、棚田を作って、車の運転をしたり、市場で物を売って働いたり…そんな風景が、どこか自分が昔住んでいた田舎の村に似ている気がした。
生活に必要なものは全て使い込まれ(よく言えば物持ちがよい、悪く言えば買い替えるお金がない)、トタン板を張り付けた塀や屋根(雨が降るとバラバラ音がして、外の天気が分かるスグレモノ)、その辺に投げ捨てられたような古いタイヤで遊んだり、その辺に生えている草の実で遊んだり…お金がかからないように工夫して暮らしている様子や、ありのまま楽しんでいる子どもたちが輝いている。
写真から見て、決して裕福な人たちではないが、ないならないなりに幸せに過ごしている。写真に写るのがうれしくてしかたがない小学生の兄弟二人は、きっと撮影用に一番きれいな服やお気に入りの服を着ていてご機嫌。周りの人たちも、なんだかわからないけど、なんだか幸せそうだ。映画「三丁目の夕日」みたいな、下町の人情のようなものが感じられる。
人と人が一緒に暮らすから、良いことばかりではないだろうけど、なんだか妙に温かく幸せそうに見えた。さて、私自身は、今日、口をきいた人は何人いるだろうか。どんどん冷え切っていく自分自身の人間関係について考えた一冊。