夢を食べる、といわれる獏ですが、ここでは夢をまき散らします。小さな子供にとって「ひとりで夜中にトイレ」はある意味”試験”ですよね。でもこんなたのしいともだちがいっしょならこわくないかも。こどものような自由な発想で描かれた夜の夢は、真っ暗でこわいと思っていた夜のイメージを変えてくれるはずです。「こわい」を「たのしい」に変えてくれるばくの魔法に見とれます。
そして圧巻の黒!カラフルな色彩に見とれてしまいますが、それを際立たせている黒が効果的です。これくらい黒が生き生きと使われている絵本はなかなかないと思います。子供向けの絵本で黒を大胆に使うというのはかなり勇気がいることだと思うのですが、見事に「黒」を美しく、たのしく見せています。東欧の工芸品のような印象的な絵で、カレル・ゼマンの映像作品を思い出しました。表紙も美しいですね。