鮮やかな色を基調にしたグラデーション、特にホワイトの使い方がとても効果的で、透明感と同時に奥行きも感じられる幻想的な風景の数々。それはもう、物語の背景と呼ぶのは、もったいないような素晴らしさです。
風景が魅力的な絵本作家さん・・・ふと葉祥明さんを思い出しました。葉祥明さんの絵は、稲穂などがなびいているような風を感じるイメージですが、刀根さんの絵は同じ風景でも、ほんわかとした丸い形が多く使われていて、その空間に風景が浮かんでいるようなイメージでした。だから、夢の中の景色の幻想的な感じがより強く感じ取れるのかもしれません。
カエルのぴっぽと羊は、とても愛らしく、風景に同化しているけれど、不思議に存在感もあります。ぴっぽは羊と出掛け、いろいろな動物の果たせない夢や思いを聞いたのに、なぜか羊をおいて一人でどんどん行ってしまいます。羊が自分のそばにいなくなってはじめて知る羊の大切さ・・・。そして冬を越え、春が来てやっと羊と再会。物語も奥が深く、味わい深いです。
子どもでも絵の美しさやカエルや羊の可愛さを楽しめると思いますが、大人にとっては、何度も手に取りたくなる、時間を忘れて眺めていたくなる絵本だと思いました。